1月の雨の夜、サム・クリスティーさんの愛猫『アトラス』が玄関先で鳴いていました。その声を聞いたクリスティーさんは、家の近くに迷子の猫がいるかもしれないと思いました。アトラスは以前も、迷子の猫を見つけた時に同じように鳴いていたのです。
「その日は激しい雨が降っていたため、道路が浸水していました。私はアトラスの鳴き声を聞き、懐中電灯を持って玄関を出ました。」
そして、アトラスが正しかったことが証明されました。クリスティーさんは家の前の道路を渡ったところで、ずぶ濡れの子猫を発見したのです。
「私は子猫に手を伸ばしました。子猫は助けを待っていたのか、威嚇したり、暴れたりはしませんでした。私はすぐに家の中に戻り、子猫の全身をキレイにしました。」
その後、『ネル』と名づけた子猫を、クリスティーさんはアトラスに紹介してみました。最初は少しだけ威嚇したアトラスでしたが、すぐにネルを受け入れて、まるで我が子のように子守りを始めたのです。
実はアトラスも、ネルと同じ保護猫でした。そのためにアトラスには、ネルの寂しい気持ちが分かったのかもしれません。
クリスティーさんが初めてアトラスに出会ったのは地元の保護施設でした。『ハワイ野生動物センター』でマネージャーを務めていたクリスティーさんは、ちょうどその頃、一緒に自然の中を冒険できる猫を探していたのです。アトラスはハーネスをつけられても、全く嫌がったりしませんでした。
アトラスを家族に迎えたクリスティーさんは、アトラスと一緒に様々な場所に出かけるようになりました。
「アトラスは自然に触れるのが大好きで、いつも自然を感じています。彼は様々な場所に興味を持ち、私の前を軽快に歩いていきます。彼は冒険をしながら、ハワイの美しい景色を楽しんでいます。」
また、クリスティーさんはアトラスを連れて、週に3回は自然いっぱいの公園に出かけるそうです。
そんな冒険好きのアトラスの元に、ネルがやって来ました。クリスティーさんは最初、ネルを散歩に連れて行こうとは考えていませんでした。しかし、ネルの方は別の考えを持っていたのです。
「私達が散歩に出かけようとすると、ネルは大きな声で鳴き始めました。私はその声が『一緒に散歩に行きたい!』と言っているように聞こえました。そこで私はネルに小さいハーネスをつけて、一緒に散歩に出かけることにしたのです。」
クリスティーさんはネルをキャリーバッグに入れて、いつもの公園に向かいました。しかしネルは、それだけでは満足できなかったのです。
クリスティーさんはネルが外に出たがっていたため、バッグから出してあげました。するとネルはアトラスの後を追って、散歩を始めたのです。
また、アトラスの方もネルのことが気になるようで、何度も後ろを振り向きながら散歩を続けました。
「アトラスは何度も振り返りながら、ネルがいることを確認していました。一方のネルは、アトラスの後ろを懸命についていっていました。時々、アトラスとの距離が開くと、ネルは少し慌てていました。」
クリスティーさんが散歩の途中でネルを抱きかかえようとすると、ネルは彼女の腕の中から逃れようとしました。
「どうやらネルはアトラスと同じことがしたかったようです。結局、ネルは最後まで自分の足で歩き続けました。」
散歩から帰ったネルは、アトラスにピッタリとくっつきながら昼寝を始めました。どうやらネルは、アトラスと同じことをするのが大好きのようです。
そんなネルは、アトラスから面白い習慣も学びました。
「ネルはいつも靴下を咥えて歩くようになりました。また、テーブルの上から食べ物を盗むようになりました。それは全てアトラスから学んだものです。」
その後、クリスティーさんは友人の家に、ネルを養子に出しました。「アトラスはネルが旅立ってから数日間は外に出ようとせず、ひとりで過ごしていました。しかし、次第に同居猫と過ごすようになったため、彼と一緒に再び冒険に出かけることにしました。」
一方、友人の家に引き取られたネルは、保護猫の『コナ』と共に新しい生活を始めたそうです。
しばらく落ち込んでいたアトラスですが、クリスティーさんと訪れた公園で、新しい友達との出会いがあったそうです♪
クリスティーさんはいつかまた、アトラスが迷子の子猫を連れて来るのではないかと思っているそうです。
きっとその時はまた、愛情深いアトラスが猫としての生き方と自然の素晴らしさを教えてくれることでしょう。
こうしてネルを立派に育てたアトラスは、再び以前の生活に戻りました。これからもアトラスは、クリスティーさんと一緒にハワイの自然を感じながら、のびのびと暮らしていくことでしょう。