ある日、クリス・ノースラップさんが日頃の疲れをとるために、家族と一緒に短期間の休暇に出かけました。しかし、宿泊場所に着いた数分後に見知らぬ猫が駆け寄ってきて、クリスさんの計画は中止になったのです。
のちに『ルーファス』と名付けられたその猫は、何も前触れもなくクリスさんに向かってきました。経験豊富な猫の救助者であるクリスさんは、ルーファスの姿に不安を覚えました。
「私達が休暇用に借りた家の車庫に車を止めると、ルーファスが私達の車に駆け寄ってきました。私は彼の状態を見て言葉を失いました。彼は非常に衰弱していて、全身の毛がひどく荒れていて、口も痛々しい状態でした」とクリスさんが言いました。
ルーファスのことがとても心配になったクリスさんは、休暇を中止してルーファスのことについて調べ始めました。クリスさんが土地の所有者に電話をかけると、ルーファスがこの地域でよく知られている猫で、家族がいないことがすぐに分かりました。
「ルーファスは近所の人達にご飯を食べさせてもらいながら生きている地域猫でした。私は彼のことをいつも気に掛けている近所のケンドラさんに話を聞くことができました。ケンドラさんは彼が誰かに保護されて、必要な獣医さんの治療を受けられようになることを願っていました。」
ケンドラさんは出来る限りの世話をしていましたが、ルーファスを動物病院に連れて行ったり、家に迎えたりするためのお金がありませんでした。クリスさんが猫の保護活動を行っていることを知ったケンドラさんは、ルーファスの以前の写真を見せて、ルーファスを助けて欲しいとお願いしました。
「ケンドラさんは1年前の元気だった頃のルーファスの写真を見せてくれて、それが私の決意をさらに固くしました。今のルーファスはひどく衰弱していて、早く彼を助けなければならないと強く感じました。」
クリスさんの優しさはすぐにルーファスの心を魅了して、その日の残りの時間をふたりで一緒に過ごしました。ルーファスはクリスさんが用意してくれた夕食を物凄い勢いで平らげると、家の外で眠り始めましたが、決してクリスさんから遠く離れることはありませんでした。
「翌朝、私達はルーファスを連れて自宅に向かいました。帰りの車の中のルーファスは、ほとんどの時間を私の膝の上で過ごしていました。」
推定年齢が約14歳のルーファスは、保護された後でたくさんの初めての経験をしました。ルーファスはクリスさんの24時間体制のケアと安定した食事で、すぐに全身がふっくらとしてきました。さらにルーファスは家の中で初めてのベッドを手に入れました。
「ルーファスは最初、ベッドが何かを全く理解していないようでした。彼はベッドの柔らかさを感じると、かなりの時間フミフミし続けて、ようやく気持ち良さそうに横になりました。」
ルーファスが初めてベッドを手に入れた時の様子はこちら。
心地良いベッドと一日に何度も出される食事は、弱々しかったルーファスにとても必要なものでした。そんなルーファスが動物病院で診察を受けると、心雑音がしていて、腎臓病と貧血、そして甲状腺機能異常があることが分かりました。
ルーファスの年齢を重ねた身体は、これまでに多くの苦しみを経験してきました。ルーファスに残された時間は限られていたため、クリスさんは静かに暮らすことのできる愛情いっぱいの家を見つける決心をしました。
「獣医さんからは『ルーファスの寿命があと半年から2年だろう』と言われました。その時間がルーファスにとって幸せな時間になるように私は動き始めました。」
ルーファスが休んでいる間、クリスさんはルーファスの話をネット上に投稿しました。すると多くの保護団体がルーファスに心を動かされて、里親さんを見つけるために協力することを申し出てくれました。そして里親さんを探し始めると、エミリー・ラフトさんという女性がルーファスのことを知ったのです。
「私が保護団体のページを見ていると、ルーファスが余生を過ごすための家を探していることを知りました。写真の中の彼の姿を見て、私は彼がとても優しくて可愛い猫だと思いました。そして、『彼はただ好きなご飯を食べて、ゆっくりと過ごしたいだけです』という投稿を見て、彼が私と婚約者にピッタリの猫だと感じました」とエイミーさんが言いました。
エイミーさんはルーファスを一目見た瞬間から、その姿に強く惹かれました。しかし、エイミーさんの心をとらえたのはルーファスの愛らしい姿だけではありませんでした。ルーファスの物語がエイミーさんに特別な存在のことを思い出させ、最終的にルーファスを引き取ることを決心させたのです。
「私はルーファスの物語を読んですぐに、以前一緒に暮らしていた愛猫の『キャリー』のことを思い出しました。キャリーは21歳近くまで生きましたが、歳をとるにつれて健康上の問題が増えていきました。その一つがルーファスと同じ腎臓病でした。私はキャリーの最期の3年間を同じ家で過ごし、その時間を彼女と共有できたことに幸せを感じていました。」
「私はルーファスの姿を見た時、キャリーに与えたものと同じものをルーファスにも与えたいと強く思いました。」
エイミーさんと婚約者はルーファスについて問い合わせて、正式に家族になることが決まりました。するとこれまでルーファスのケアを続けてきたクリスさんは、ルーファスとの別れに寂しさを感じましたが、同時にルーファスの願いが叶ったことに大きな喜びを感じました。
またルーファスの治療に関わった人達や、地域猫として長い間世話をしてきたケンドラさんも、ルーファスの幸せを心から喜びました。
「ルーファスがあとどれくらい生きられるかは分かりませんが、彼にふさわしい愛情とケアを与えてくれたことにとても感謝しています。私は彼と知り合ってからずっと、彼の家を探していました。クリスさんの愛情深い行動に心から感謝しています」とケンドラさんがクリスさんにメールを送りました。
This post was published on 2024/11/28