ある日、ロワン・ジョーンズさんは生後6週の子猫『ティーシャツ』を家族に迎えました。ロワンさんの知人の飼い猫が出産し、そのうちの1匹を譲り受けたそうです。ロワンさんは愛らしいティーシャツの姿に、一瞬で恋に落ちました。
ティーシャツは信じられないほど社交的な猫でした。近所の人達とすぐに友達になって、いつも一緒に遊んでいたそうです。
またティーシャツはとても冒険好きで、よく遠出をしていました。ある日、家から随分離れた場所でティーシャツを見つけ、とても驚いたそうです。しかし、ティーシャツは必ず家に帰ってきて、長い間家を空けることはありませんでした。
そんなある日のこと、1歳を迎えたティーシャツが突然姿を消しました。ちょうどその頃、小さくなった首輪の付け替えをしている時で、ティーシャツは首輪をしていなかったのです。
その日以来、どこかで車にひかれたり、怪我をしているのではないかとずっと心配していました。結局、いくら探してもティーシャツは見つからなかったため、ロワンさんは深い悲しみに包まれたのです。
それから11年後。
ロワンさんの家に、地元の獣医さんから電話がかかってきました。なんとティーシャツが見つかったというのです! ロワンさんはとても驚き、声を出して喜びました!
ティーシャツが行方不明になってからの7年間は、どこで何をしていたのかは分かりませんでした。しかし、最後の4年間はロワンさんの家の近所で暮らしていたそうです。そこはティーシャツが行方不明になった場所から、徒歩で2〜3分ほどのところでした。
ティーシャツが動物病院へ運ばれて来たのは、車に轢かれてしまったからでした。ティーシャツを世話していた男性が、事故後すぐに獣医さんのところへ連れて来たそうです。その後、獣医さんがティーシャツの身体をスキャンして、ロワンさんが所有する猫だと分かりました。
「電話でティーシャツの無事を知った後、11年ぶりに彼と会うことにとても緊張しました。しかし、彼の元気そうな姿を見てホッとしました」とロワンさんは言いました。
「獣医さんはティーシャツが外で暮らしていたにも関わらず、とても健康的だったことに驚いていました。どうやら彼は、多くの人達から世話をしてもらっていたようです。」
ロワンさんがティーシャツに会いに行った時、自分が唯一の訪問者ではないことを知りました。病院にはティーシャツを心配する人達が、次々とお見舞いにやって来たのです。ロワンさんは、ティーシャツがとても多くの人達に愛されていることを知りました。
ティーシャツを獣医さんのところへ連れて来た男性は、ティーシャツのことを『ケーモ』と呼び、約2年間世話を続けて来たそうです。そして、その期間で男性とティーシャツは、特別な絆を育んでいたのです。
ロワンさんは、ふたりが深く結ばれていることをすぐに理解しました。今でもティーシャツのことを愛しているロワンさんですが、ふたりの姿を見て、自分が何をしなければならないかが分かったのです。
「私はティーシャツを返して欲しかった。でも、ティーシャツの姿を見て分かりました。その男性は私よりもずっと長く、ティーシャツと過ごしてきました。今のティーシャツは、彼のそばにいることが一番幸せだと私は感じました。」
「もし、私がティーシャツに会いたくなったら、自分の方から会いに行こうと思います。」
ロワンさんは、ティーシャツの新しい飼い主さんと医療費を半分ずつ払いました。そして、無事に退院したティーシャツを、新しい飼い主さんに託したのです。
新しい飼い主さんは、ティーシャツの日常の姿を撮影し、定期的にロワンさんに送って来てくれるそうです。
ロワンさんはティーシャツのことが大好きですが、ティーシャツが新しいお父さんを愛していることを知っています。ティーシャツが一番幸せな人生を歩むことが、最も大切なことだとロワンさんは思っているのです。
出典:Rowan Jones