洪水が町を襲い、全てを飲み込んでいく中、リー・ウェイさんが小さなボートで混乱している町を慎重に進み、急流に逆らいながら生存者を探していました。リーさんの周りにある光景は非現実的なものでした。家々は水没し、木々は根こそぎ流されて、人々の持ち物が水の上に浮かんでいました。
すでに何人かを安全な場所に引き上げたリーさんでしたが、強い疲労感を感じ始めていました。それでもリーさんは渦巻く水に目を凝らし続けていました。
その時、遠くの方でずぶ濡れになっている小さな何かに気づきました。リーさんは最初それが瓦礫だと思いましたが、よく目を凝らすと、怯えた子猫が発泡スチロールの箱に乗っていて、下流に流されていることが分かったのです。
出典:モリー一家
子猫は大きな目でリーさんのことをじっと見つめて、壊滅的な状況の中で無言で助けを求めていました。その姿を見たリーさんは、「待ってて!」と子猫に向かって叫びました。
出典:モリー一家
リーさんは水の中に入って、子猫の元へと近づいて行きました。子猫は混乱していて発泡スチロールの上で動けなくなっていました。
そんな子猫が乗っている発泡スチロールの箱にリーさんが手をかけると、すぐにそれを持ち上げて岸の方へと向かいました。
出典:モリー一家
その後、無事に地面に足をつけることができた子猫でしたが、全身がずぶ濡れで震えていました。そんな子猫の体をタオルで拭いたリーさんは、子猫に食べ物を与えました。すると子猫は非常にお腹が空いていたようで、差し出された物を勢い良く食べ尽くしました。
それから数日間、洪水の被害から逃れるために避難していた子猫は、男性のそばを離れようとはしませんでした。毎晩子猫はリーさんの隣で丸くなって、ゴロゴロと優しく喉を鳴らし続けました。その音は洪水によって荒廃した町で、リーさんの心を慰めてくれました。
リーさんは子猫に平安を意味する、『ピン・アン』という名前を付けました。リーさんはピン・アンを洪水の中から救い出しましたが、それと同じようにピン・アンはリーさんの元にかけがえのないものを届けて、暗い日々に希望を与えてくれたのです。
こうしてピン・アンはリーさんのおかげで危険な状況から脱することができました。きっとピン・アンは自分を救ってくれたリーさんにいつまでも感謝しながら、安全な場所で幸せな毎日を送っていくことでしょう。