何年も野外で暮らしてきた大きなほっぺの猫は、人間が用意した食べ物などで何とか命を繋いできましたが、家を提供してくれる人はいませんでした。猫はアライグマなどとご飯を巡って争わなければならず、何日もお腹を空かせていることもよくありました。
そんな中、ペットシッターのサンドラさんが日に日に荒れていく猫の姿を目にしました。アライグマ達がご飯を食べている間、やつれた猫は隅の方でずっと座っていました。猫はとても疲れていて、まるで全てを諦めているかのように見えました。
サンドラさんは猫を助けることを決心して、猫を家の中に招き入れると、静かで快適な部屋を用意しました。そして猫に『クライド』と名付けました。
クライドは首に深い傷を負っていて、眼瞼内反症(がんけんないはんしょう。まぶたが内側に曲がっていて、常にまつ毛などで目が擦れている状態)などの多くの問題を抱えていました。
ずっと砂や埃だらけの野外で生きてきたクライドにとって、家の中はまるで宮殿のようで、安全な場所で過ごせることに大きな喜びを感じていました。
その後、保護団体『セント・フランシスコ・ソサエティー・アニマル・レスキュー』の支援によって、クライドの傷は綺麗になって、まぶたも矯正されました。またクライドは人間用のベッドに最高の心地良さを感じたようで、いつもその場所で幸せそうに眠りにつくようになりました。
「クライドはフカフカの毛布や私の枕などを試してみましたが、最後は私に寄り添うことが一番だと判断したようです。私が夜中に目を覚ますと、クライドが気持ち良さそうに丸くなっているのが分かります」とサンドラさんが言いました。
クライドは保護から2週間ほどたっぷりと休息を取り、その間に急速に回復していきました。「クライドはキャットニップのオモチャを発見して、それが大好きになりました。彼の全身の毛は随分と綺麗になって、より柔らかくなりました。彼はお喋りで甘えん坊な性格で、夜になると必ず私に寄り添ってきます。」
クライドは新たに得た体力と食欲で順調に回復していき、家の中のあらゆるものにますます興味を持つようになりました。またクライドはサンドラさんの後を追うのが好きになって、いつも影のようにサンドラさんについて行っているそうです。
そんなクライドはFIV(猫免疫不全ウイルス)の検査で陽性反応が出ましたが、本人はそのことを気にしておらず、まるで探偵のように家の隅々まで調査することを楽しんでいるそうです。
クライドは他の猫とも仲良くなることができますが、家の中の唯一の猫になることを望んでいます。
クライドは約9ヶ月間家の中で過ごし、幸せと自信に満ちた猫に変わりました。今のクライドはすっかり家猫になっていて、生涯の家を探す準備ができているのです。
「保護される前のクライドは何日も食事をとらずに過ごすこともありました。でも今の彼は快適な室内生活を楽しんでいて、自分が家の中のボスだと信じています」とクライドの世話を引き継いだ養育ボランティアのコリーンさんが言いました。
クライドは相変わらず人間の後をついて歩くのが大好きで、夜になるとベッドで一緒に眠り始めます。そして朝になるとゴロゴロと喉を鳴らして、幸せいっぱいの一日をスタートさせるのです。
「今のクライドは一日中のんびりと過ごしていて、家の中での暮らしに最高の幸せを感じています」とコリーンさんが嬉しそうに話してくれました。
こうして野外で大変な生活を送ってきたクライドは、優しい人達のおかげで新しい人生を歩み始めることができました。これからもクライドは家の中を完全に支配しながら、何不自由ない日々を送っていくことでしょう。