ある日、家の裏庭で全身が汚れで覆われていた3週齢の子猫が発見されました。家の住人はすぐに子猫を保護すると、地元の保護施設へと連れていきました。
施設のスタッフ達は子猫の養育を引き受けましたが、最初に想像していたよりもずっと子猫の状態がひどいことが分かりました。子猫は重度の白癬(はくせん。カビによる感染症)を患っていたのです。
スタッフ達は子猫を治療するために薬を与え、シャンプーで全身を洗いましたが、さらに症状は悪化していきました。そこでスタッフ達は経験豊富な養育主さんを探し始め、これまでに多くの子猫達を救ってきた『ハーツ・アライブ・ビレッジ』に助けを求めたのです。
「私は病気に苦しむ5週齢の子猫を保護施設に迎えにいきました。私がスタッフから受け取った手紙には『これまでで一番ひどい白癬』と書かれていました。私はすぐに子猫を元気な状態に戻してあげたいと思いました」と養育主のエレン・リヒターさんは言いました。
エレンさんは子猫に『カイ』と名づけて、白癬の治療を始めました。
「私はこれまでに白癬の猫の治療を何度も行ってきましたが、こんなにひどい状態の猫を見たことがありませんでした。カイの全身の毛は抜け落ちていて、至る所から肌が見えていました。」
「カイが大きな瞳で私を見上げた時、私の心は壊れました。そして彼女がこれまでにどれだけ辛い時期を過ごしてきたかを考えました。」
エレンさんはカイを自宅に連れて帰り、できるだけ快適に過ごせるようにしました。「カイは家の中が安全な場所だと感じたようで、夜を迎える頃には随分と落ち着いていました。私は彼女の寝ている姿を見ながら、彼女が命をつなぐことができないかもしれないと心配しました。」
幸いにもカイは最初の夜を乗り越えることができました。しかし、回復への道のりは非常に困難なものでした。
エレンさんは皮下注射液で水分を補給して、シャンプーと飲み薬で治療を始めました。カイはとても混乱していて、明らかに幸せではありませんでした。
「カイは私が治療を行っていることを理解していないようでした。私はじかに彼女を撫でてあげたかったのですが、手袋をしないと彼女に触ることができませんでした。彼女はいつも治療を嫌がっていて、治療が終わる時間まで待っていることができませんでした。」
カイは食欲もほとんど無かったため、最初の週はエレンさんがシリンジで定期的にご飯を食べさせる必要がありました。
そんなエレンさんの献身的な看病のおかげで、3週間ほどが経った頃からカイは回復を始め、身体にエネルギーが満ちてきました。カイは日に日に力強くなっていき、遊びたいという気持ちも高まっていきました。
「カイはまだ白癬を患っていたため、他の猫と接触することができませんでした。彼女が一緒に過ごせるのは私だけでした。でも彼女は薬とお風呂を嫌っていて、いつも私のことを怒っていました。そのため私が彼女と遊ぼうとしても、彼女は私と遊ぶことを拒否しました。」
「カイの毛は再び成長を始めて、全身の毛が生え揃っていきました。彼女が毎日良くなっていく姿を見るのは、とても嬉しいことでした。彼女の薬の量は徐々に減っていき、お風呂に入る必要もなくなりました。すると彼女は私のことを受け入れ始めました。」
そして治療を始めてから10週間後、カイはついに白癬を克服し、完全に元気を取り戻しました。「私はついにカイのことを抱きしめ、キスをすることができました。私はこの瞬間をずっと待っていました。」
一方のカイは触られたり、抱きしめられることに慣れていなかったため、不安を感じているようでした。しかし、エレンさんに毎日触れられているうちに徐々に慣れていったそうです。
治療中に嫌なことをたくさん経験したカイは、人間の手を敵だと認識していました。そのため人間の手が敵ではないことを学習させるためには、しばらく時間がかかりました。「それは簡単なことではありませんでした。カイは人間の手を受け入れるまでに、前進と後退を何度も繰り返しました。」
「その一方、好奇心が強くなったカイは、オモチャにとても興味を持つようになりました。私は彼女に社交性を身につけさせようとして、彼女に先住猫を紹介しました。しかし、彼女は他の猫との接し方が全く分からなかったため、いつも先住猫を攻撃してきました。幸いなことに先住猫はとても優しい猫で、忍耐強く接し続けてくれたため、彼女は少しずつ変わっていきました。」
「そしてカイはお茶目で、元気いっぱいの子猫になりました。彼女は私の足と遊ぶようになり、追いかけっこをするようになりました。」
そして、ついにカイは里子に出られる状態になりました。エレンさんはカイが素敵な家族に迎えられる日を、心から待ち望んでいました。
「幸いなことにカイを引き取りたいという女性がすぐに現れました。女性の家には子供達がいて、犬と猫を飼っていました。」
「私はカイの白癬のことや、行動に少し問題があることを全て話しました。私はその時、女性がカイのことを断るかもしれないと考えました。しかし、女性は私の話を聞いても、カイを家族に迎えることを全く躊躇しませんでした。」
そして3月2日、カイはついに生涯の家へと旅立っていったのです。新しい家では家族全員がカイのことを受け入れて、すぐに家族の一員に迎えてくれました。
「カイは新しい家族に完全にフィットしました。家族はみんな彼女のことを愛しています。そして彼女の方も新しい家族のことを愛していて、いつも楽しそうに過ごしています。」
「私は最初、カイが命をつなぐことができるか心配でした。でも彼女は奇跡的に回復を続け、最高の結果に辿り着くことができました!」とエレンさんは嬉しそうに話してくれました。
これからもカイは最高の家族と共に、いつまでも幸せな毎日を送っていくことでしょう。
出典:foster_kitten_tails/lovemeow