雪が降り始める直前の寒い夜のこと、セリーヌ・クロムさんがオヤツを食べようとキッチンに向かっていると、窓の外を見つめる飼い猫達の姿を発見しました。
猫達は鼻をガラス戸に押しつけながら、外にある何かに魅了されていました。気になったセリーヌさんが窓の外を見ると、そこには灰色の子猫の姿があったのです。
「私は子猫にご飯をあげようとしましたが、子猫は私の姿を見るとすぐに逃げてしまいました。そこでそのままバルコニーにご飯を残しておくと、いつの間にか子猫が全てのご飯を食べ尽くしていました」とセリーヌさんが言いました。
お腹を満たした子猫はバルコニーに残って、窓の外から家の中の猫達のことを見つめてきました。「家の猫達は暖かくて安全でしたが、灰色の子猫は寒さの中でひとりで丸くなっていました。でも私がドアを開けようとすると、すぐに逃げていってしまいました。」
気温がさらに下がっても、誰も子猫を迎えに来る人はいませんでした。そこでセリーヌさんは保護施設『シャトンズ・オルフランズ・モントリオール』から捕獲器を借りると、子猫が再び姿を現すことを期待して、バルコニーにご飯を用意しました。
「翌朝、目が覚めて窓の方に向かうと、外に子猫の姿があって驚きました。子猫は前の日に置いたご飯の匂いを嗅いでいましたが、私の姿に気づいた瞬間に逃げていきました。」
セリーヌさんはすぐに行動を起こし、子猫を安全な場所に連れて行くために捕獲器を設置しました。「その後、私は子猫のことを長く待つ必要はありませんでした。捕獲器を設置してから2時間も経たないうちに、捕獲器の入り口が閉まる音がしました。」
生後8ヶ月だった子猫はとても怖がっていたため、最初のオヤツを拒否しました。でもペースト状のオヤツが鼻につくと、子猫はセリーヌさんが部屋を出るまで待ってから、鼻についたオヤツを食べ始めました。
子猫はこれまで外の寒さに耐え続けてきましたが、この日初めて暖かい家の中で夜を過ごすことができました。
『ルスティック』と名付けた子猫をセリーヌさんが動物病院に連れて行くと、ルスティックは非常に怖がって動くことができず、キャリーの中から出ようとしませんでした。その後、獣医さんによる検査と去勢手術を受けたルスティックは、養育主さんの家に移動して、社会化のための勉強を始めました。
ルスティックは新しい家に着くとすぐにシンクの中に隠れて、周りの様子をうかがい始めました。「ルスティックはとても悲しそうな顔をしていました。彼が人間を信頼することを学ぶためには、静かな場所と美味しいご飯、そしてたくさんの愛情が必要でした。」
養育主さんはルスティックのいる部屋に座って、少しずつルスティックを人間に慣らしていきました。そして、ルスティックの方から近づいてくるのを辛抱強く待ち続けたのです。
するとゆっくりと、しかし確実に、ルスティックは人間のそばでリラックスするようになっていって、徐々に警戒心を緩めていきました。そしてついにルスティックは好奇心を満たすために養育主さんに近づいて、手の匂いを嗅ぎ始めたのです。
そんなルスティックに養育主さんがオヤツをつけた指を近づけると、ルスティックは慎重にオヤツを舐め始めました。
さらにルスティックは床に転がって、信頼の証であるフワフワのお腹を見せました。
「現在、養育主さんの努力は報われ始めていて、ルスティックは確実に人間のことを信頼してきています」とセリーヌさんが嬉しそうに話してくれました。
ルスティックは今でも大きな音や突然の動きに驚かされていますが、日に日に人間との心の距離を縮めていっているのです。
こうして暖かい暮らしを望んでいたルスティックは、初めての冬を快適な家の中で過ごすことができるようになりました。ルスティックはもうご飯や避難場所の心配をする必要はありません。ルスティックは現在、養育主さんの温かい愛情に幸せを感じていて、愛らしい個性が輝き始めているのです。
出典:comrescuemontreal/lovemeow