ある日、テキサス州カービルを拠点に活動している保護団体『カービル・ペッツ・アライブ!』に電話があり、代表のカレンさんを驚かせました。この地域は7月に同州を襲った悲惨な洪水の被災地でした。
「家屋や瓦礫を片付けていた清掃員グループの一人が、オーブンの中に猫がいるのを発見しました」とカレンさんが言いました。「オーブンの扉を開くと中から猫が飛び出してきました。猫は怯えていて無気力で、玄関ポーチの陰に身を隠しました。彼らは予想外の出来事に驚き、私達のところに猫を保護して欲しいと連絡してきました。」
カレンさんがボランティアチームを派遣して猫を救出しようとした時、今回のことが被災地にとって一筋の希望の光になるかもしれないと感じました。
「最初はとても感情的になっていましたが、その後は喜びに変わりました。この辺りでは洪水でたくさんの動物の命が失われました。そんな中でこの猫は何とか命をつなぎ、助けを求めていました。」
カレンさんは猫が洪水による急激な水の上昇によって避難を余儀なくされた家で、他の動物達と一緒に暮らしていたと考えています。しかし、猫がどのようにしてオーブンの中に入ったのか、またどのくらいの間オーブンの中にいたのかを知る術はありませんでした。
「猫はただ生き延びようとして必死だったのだと思います。もしかしたら洪水が家を襲った時、水がオーブンを開けて、それがまた閉まったため、閉じ込められてしまったのかもしれません。周りの状況は非常に混乱していました。そんな中、清掃員がオーブンの扉を開けて、私達に連絡をしてくれて本当に良かったです。」
猫の保護に向かったボランティアチームは、苦労することなく猫を車に乗せて、緊急治療をしてもらうために動物病院に急ぎました。
そして、『フリーマン・フレッツ・獣医クリニック&シェルター』の獣医のシェルビーさんが慌てた様子の電話を受け取りました。
「週末の営業時間外に連絡があり、電話の相手はオーブンの中で猫を見つけたと言っていました。オーブンの中はどれほど暑かったことでしょう。そんな状況の中でどのようにして生き延びたのか不思議でした。私は猫がどんな状態になっていたのか全く想像できず、猫が生きていることに驚きました」とシェルビーさんが言いました。
シェルビーさんは猫に会うために動物病院に急行しました。
「猫は衰弱していて、とても怯えていましたが、精神的には予想以上に元気そうでした。体重は大幅に減り、ひどい脱水症状に陥っていて、足には火傷を負っていました。また水に浸かったことは一目瞭然で、皮膚と毛に残留物が付着していました。」
シェルビーさんは猫に水分補給と必要な治療を施しました。猫が食事をするとは思っていませんでしたが、オヤツを与えると猫は物凄い勢いで食べ始めて、たくさんの水を飲みました。「猫は必死に生きようとしていました。」
猫は顔をしかめていましたが、治療の経過は良好でした。「猫は年老いていて、いつも不機嫌そうなおじいちゃんのような顔をしています。」
シェルビーさんと動物病院のスタッフ達は、猫に『イージーベイク』と名付けました。
「今回の洪水の被害は本当にひどく、たくさんの命が失われて、多くの動物や人間が悲しみに暮れています。私達はそんな中で何とか士気を高め、助けを必要としている多くの命と向き合ってきました。」
イージーベイクはカレンさんが飼い主さんを探している間、必要なだけ動物病院に滞在することができるようになりました。「私はイージーベイクの家の人に何度か電話をして、メッセージを残したりしましたが返事はありませんでした。洪水によって家の中にあった全てのものが流されていました」とカレンさんが言いました。
保護団体と動物病院の両チームのメンバーは、洪水の後に発見された動物達の世話を行い、飼い主さんと再会させようと努力していますが、それには多くの時間がかかることを理解していました。
「ここに住んでいた人達は全てを失いました。この地域には多くの支援が必要です。今はただ自分達の生活を維持することに精一杯のため、私達は彼らのペットを世話していこうと思っています。今すぐにペットを引き取ることができない方には、『身の回りのことを整理している間、ペットを私達のところで預かります』と伝えています。」
カレンさんはこの地域に住む人達に、助けを必要としている他の動物達に目を光らせて、耳を傾けるように呼びかけているそうです。
イージーベイクが予想外の場所で発見されて、その驚くべき回復を目の当たりにしたことで、地元の保護団体は洪水を生き延びて逆境を乗り越えようとしている動物達についての連絡が、今後さらに増えるだろうと考えているそうです。
「私達はまだ生きているペットがいるかもしれないという望みを持っています。全てが非常に混乱しているため、猫がどこかに隠れているかもしれません。この地域に住んでいる人達にお願いです。家具や車の下、引き出しや家電製品の中など、怯えた動物が入り込めそうな場所を探してみてください。イージーベイクもあの時オーブンの扉が開かれていなかったら、命をつなぐことはできませんでした」とカレンさんが話してくれました。
This post was published on 2025/08/11